AEVE ENDING
(…ふざけやがって)
いい加減、暗闇に目が慣れてきてもいい頃だというのに、近距離にいるはずの人物が見えなかった。
(―――能力か)
面が割れれば、それはリスクになる。
顔すら見えない、ただ気配だけが形となって、アダムたちが囁きあうのだ。
「大丈夫、」
(苦痛はやがて、貴様の誇りに代わっていくだろう)
「深く、痛めつけてあげる」
(神になるためだ)
「…神の使者に、君は洗礼を受けるんだ」
(その体を、人よりアダムより、なにより、気高いものにしてやろう)
「雲雀様のカリスマを、君に汚されるのは、もう」
───終わりだよ。
(生物として終われないのは、)
「、…っ!」
間抜けな音を立てて、シャツのボタンが弾け飛んだ。
ひきつった皮膚が外気に触れて、鳥肌が立つ。
荒い息が首筋に触れる。
ここまで近付いてもやはり、顔は見えない。
ただ繰り返される荒い呼吸と、押さえつける筋力のと、生暖かな体温が倫子に他人の存在をを知らしめる。
―――キモチワルイ。
「汚い、肌」
見えない感触が、静かに高ぶるうちの恐怖が、──思うだけで爛れていくような、古い記憶が。
『神のなり損ないだ』
酷く、気味が悪い。
『おねぇ、ちゃ…』
(気持ち悪い)
「…っ、」
頭に衝撃が走る。
殴られたのだと気付いた時には既に、全身裸に剥かれていた。
(…馴れたよ)
研究当時はいつもいつも、衣服など身に付けている暇すらなかったから。
『着ると、メスの痕に擦れて痛い』
『包帯、巻いてやるよ?』
『…どうせ次の手術でまた裸にされるから要らない』
漂白された――─まるで深海魚が地上に飾られたような、生っちろい不気味な体が、いつも他人の目に曝されていた。
それが耐えられなくて、目に入る鏡を片っ端から殴り割ったこともあった。
(…だから、人の目に曝されること、くらい)