AEVE ENDING
「───幾田桐生」
静かに吐き出された、それは薄い唇を伝い雲雀のうちを曝す。
「僕はただ、取り戻したいものがあるだけ」
かしゃり、力を込められた靴底で、人形が鳴いた。
表情が露わにならぬその麗しく形造られた白磁の肌は、冷気を受けて更に血色を退いてゆく。
「取り戻したい、もの、と」
数秒の沈黙後、桐生がくつりと嗤って見せた。
さも興味深そうに、或いは侮蔑するように。
「修羅が、なにを望み、なにを奪われたと云うか」
神が、欲するもの。
『雲雀』
『雲雀、』
湧き上がるこの声は、あの日からこの胎内に巣くったまま排出ず蓄積するばかり。
『ひばり…、』
―――望むものは。
「僕が始末する筈だった家畜を横から浚われてね。…アレは、僕の手で終わらせないと気が済まない」
冷ややかに吐き捨てた言葉は、どこかそう装うような違和感が感じられた。
染まらない柳眉の柔和な弧は、努めて変化させないようにと。
「君が、随分と露骨な執着を見せる…」
感嘆めいたそれは、なにを秘めているのか。
腕を組む桐生は、その機能しない白濁の片目をぎょろりと左右させた。
緩やかに歪む唇の端々の浅い皺。
孕む、狂気。
「神が小者に執着する様は、目も当てられないな」
挑発、であるらしいそれを、雲雀は眉を顰めることなく受け止めた。
「僕がなにに執着しようが、僕の勝手だ」
細い肩を竦めた仕草はどこか投げやりにも見える。
いい加減、この男の相手も飽きてきたのだろう。
しかし桐生は組み直した手に再び顎を乗せ、不愉快を全面に押し出して見せる。
まだ雲雀を解放する気は、ないらしい。
「───いつからそんな人間臭い言葉を吐くようになったのかね」
低く吐き出されたそれは悪意に満ちていて、嫌悪さえ感じられた。
不愉快なのはこちらの方だというのに。
雲雀は片眉を引き上げ、目の前の男を侮蔑の眼で見た。
この男の理想像には、辟易する。