AEVE ENDING
「…どちらにせよ、その駒を傀儡にするつもりなのでしょう」
ならば腑抜けになろうが構うことではない。
雲雀は、確信していた。
「───なにを、言っているのかね?」
桐生の白々しい眉が上がる。
濁々しい白がゆるゆると嗤い、笑みを象っている唇は形を変えはしなかった。
「私に人の傀儡はできぬと、君はよく知っている筈だが…」
幾田桐生。
人類最初のアダムの血を引く者であり、世界箱舟連盟のトップに立つ男。
所持する特殊能力は傀儡───ただし、意志を持たない物体に限る。
「私が何故、ピグマリオニズム(人形愛)と呼ばれていると思う?」
手元の小さめなドールをその皮の厚い手に納める。
「私が最も好んで操るのが、この美しいドール達だからだ」
桐生が握っていた指を手を振るように開く。
ぱかりと闇から飛び出したドールが、操る糸もなく、雲雀に飛びかかってきた。
「、」
小さく細い故の先の尖った指が、鋭い刃物のように伸ばされている。
それを怯むことなく叩き落とし、床に落ちたそれを雲雀は革靴で踏みつけた。
ぱきり、とそれの柔な外装が割れる。
それらを正面から見据え、桐生は唇をく、と釣り上げた。
「───解るかね?私はドール以外には興味がない。なにかあればすぐに表情を歪め、醜い感情を剥き出しにするような脆弱な生き物よりずっと、彼らは美しく孤高で精錬されている」
例え腕を切り取ろうが、胸を裂こうが、ドール達はその美しい表情を歪めない。
語る様は陶酔した男。
相手は美しい女でもなく華美な花でもない───ただ物言わぬ、美麗な芸術品達。
「それに…、精神と意志を宿す「ヒト」を操るにはリスクも消耗も大きすぎるだろう」
そのような危険な真似を何故、私がする必要がある。
くつり、と嗤う。
汚濁した湖面に広がる一灰汁の笑みは、まるで空気を汚すように浸透してゆく。
雲雀が不愉快そうに眉を寄せると、反して桐生は酷く愉しげに喉を鳴らした。
「全く、おかしなことを聞く。一体どうしたのかね、君は」
雲雀、と。
温厚なその声色とは違うその深く刺々しい空気に、雲雀の全身が粟肌立ってゆく。
それは興じる、殺意。