AEVE ENDING
「…なに?」
くたりと意識を失った倫子を乱暴に床に落とすと、雲雀は顔を傾げ、呟いた。
目の前の馬鹿、もとい倫子が失神する前に流れてきた、無意識下の意識。
「『懐かしい』…?」
一体、なにが。
俯せで横になる倫子を見下ろしながら、雲雀は眉間に皺を寄せる。
痛めつけている間に浮かんだのは、自分を攻撃する人間が憎くて仕方ないという顔。
(果敢にも、無駄にも、僕を睨みつけて)
(…何故、畏れないの)
雲雀僕の意志ひとつで、倫子はたかが空気の圧に握り潰されていたというのに。
まさか、そんなこともわからない馬鹿じゃないだろう。
それとも、本物の馬鹿なのか。
(…おかしな生き物)
「生物」というものは、他から痛みを与えられれば多少の恐怖を覚えるものだ。
本物の恐怖は胎内から滲み出し、怯えおののく醜い表情を造り出す。
それが、見たかったのに。
(つまらない…)
考えても仕方ない。
時間の無駄だ。
足元で寝息を立てだした倫子を蹴り上げ、雲雀は淡々と言い放った。
「起きなよ。置いていくよ」