AEVE ENDING
「でも、なに、これ…」
傷ついた身体が目の前を占めていた。
真っ白な肌は人のものではない。
まるで、造り物みたいだ。
「この人、どうして、これで生きていられるの…」
ロゥが戦慄く。
目の前に磔られた女の体はあまりにも醜くて、気狂いのこどもにめちゃくちゃにされた人形みたいに、襤褸襤褸で。
切り裂かれた腹に手を突き入れられて、内臓を掻き回されて、奪われて、そして。
―――生きているのに、死人のような。
「かわいそう…」
無意識に漏らした悲しみは、どうしたって安っぽくて。
「かわいそう、この人、かわいそう…」
漂白されたその肢体は今、白昼に曝されている。
―――双子は、反アダム勢力の家に産まれた。
生まれつきアダムの力が顕著だった双子は、赤子の頃から館内にある地下牢に閉じこめられて育てられてきた。
何故、殺さないのか。
何故、始末しないのか。
真っ暗な檻の中で身を寄せあっていた幼子は、日々答えのない問いに頭を悩ませ続けた。
その謎が解けたのは、リィとロゥが十一の誕生日を迎えた時だった。
リィは既に初潮を迎えており、家の人間はそれを知っていた。
―――それだけだった。
見た目だけは良かったリィとロゥは、家に招かれたその趣味の政界の老父に貢がれることになった。
元々、そういった家柄だったのもある。
たまたま反アダム勢力の家に産まれた双子はこの国では珍しいオッドアイで、見目も麗しく、そして掃いて棄てても構わないアダムだったというだけだ。
好色な老人に散々弄ばれたリィとロゥは、ついに牢を分けられ、完全に隔離された。
まるで商売道具のように毎夜毎夜、内臓が腐っているような息を吐く客の相手をさせられる。
幸いだったのは、アダムと人間の間には、子ができにくいということ。
毎夜毎夜、吐きながら泣いた。