AEVE ENDING
『泣きながら、自らが求める血を嫌悪しながら、殺さずにはいられない彼女の姿は、美しかった…』
屍が、生者に狂おしく嫉妬する。
『もう、イヤだ…!』
『、ぁ、あ あ …ぁ…』
悲鳴も嗚咽も、なにもかも、憎らしいヒトと同一のもの。
(馬鹿馬鹿しい…)
一度、ただ一度でも、甘美な生の強奪を行えば、間違いなく橘倫子はそのタフな精神に異常を来すであろう。
『みんな、まっかだ…』
そして狂気に満ちた復讐の出来上がりだ。
「―――それがまさか、そこまでタフだとは思いもしなかったよ」
桐生の言葉に、倫子は目を見開いたまま硬直していた。
ゆるゆると揺れる双眸は、それこそ拠り所のない幼子のようにさ迷い、やがて雲雀へと辿り着く。
その眼の奥に、映るのは。
「…知ってたよ」
浅ましい欺瞞と不安を受け止めながら、しかし雲雀は大したことではないというように答えた。
なにを、とは訊けない。
「その体の傷の理由も、僕を蔑視する由縁も、すべて」
この醜い真実を隠し続けていたら、いつかこの不愉快な憎悪は消えると思っていた。
「…、」
唇が震えて、なにも紡げないでいる。
(―――そうじゃ、なくて)
なにを紡げばいいのか、すら。
頭の中が真っ白で、それは未だ、うまく機能しないまま。
「…橘」
呆然とこちらを見ている倫子の髪に、雲雀が腕を伸ばす。
空気に溶け込むような真白の指先にするりと掴まれた髪束に、硬直した細い肩がひくりと跳ねた。
まるで赦しを恐れるように、彼女は。
「今はまだ、ぼさっとしないで」
ボカッ。
―――殴られた。
「…いや、何故?」
思わず殴られた頬を抑えることなく呟いた。
脈絡のない暴力はいつものことだが、今回は情緒がなさすぎる。
「今はまだ、ぼんやりする暇はないよ」
頬に走る痛みに、倫子の目が数度、瞬いた。
未だ頭がハッキリしていないらしい倫子に、雲雀は小さく笑う。
―――大丈夫だよ。