AEVE ENDING
「君がなにを思おうが、僕は君を殺すから」
だから、安心して。
爽やかさすら感じさせる雲雀の微笑に、倫子は目を丸くするしかなかった。
珍しく、背中を押してくれているのだろうか。
「…そんな台詞で、どう安心しろっつうんだよ」
(ねぇ、)
私はあんたの目に、どう映ってる?
「元気出たじゃない」
雲雀が笑う。
―――その緩やかな唇が笑みを象るから、私は君から離れられなくなる。
「仲睦まじいことは微笑ましいが…」
桐生の濁々とした声と重なり。
―――ガシャァアン…!
倫子と雲雀の斜め上、桐生が座している丁度真上で、七色に煌めいていたステンドグラスが粉々に砕け散った。
厚い雲から発する光を受けて、影が三体。
うち二体は、例の双子。
―――もう一体は。
「…、」
心臓が、止まってしまうか、と。
その男には、見覚えがあった。
ガシャン…ッ。
突き破った硝子を素足で踏みつけ、獣のように前屈みで腕をぶらりと垂らした中年の男は、意識のない白濁とした眼を倫子に向けていた。
(―――死人の眼だ)
その男を囲うように立つ双子の表情は、暗い。
「…懐かしいだろう、橘」
不愉快なまでに弾んだ声が、桐生から発せられる。
ぞ、とする、静かな屍の眼が、にぃやりと倫子を見つめていた。
「―――っ…、」
がくり、と脱力した体は呆気なく床に転がり、見開かれた眼には、深い罪悪と恐怖。
「……橘?」
雲雀が訝しげに見つめてきたが、倫子に反応はない。
その青ざめた頬を、づるりと流れた冷や汗が、床を叩く。
「…怖いかね?」
男を見つめたまま硬直している倫子の姿に、桐生は満足げに喉を鳴らした。
「いつか役に立つと思い、加工を施して人形にさせてもらったよ」
くつくつと鳴る音は聖堂に厭らしいまでによく響く。
キン、と皮膚に張り付いた空気のなかで、倫子の脅えた呼吸だけが振動していた。
―――覚えているだろう?
「君が、初めて、殺した男だ」
カミサマ。
(この身体は、罪から抜け出せない)