AEVE ENDING






それは一瞬だった。

頬を撫でた少し冷えた風の温度も、急に動かしたせいで鳴った関節の音も感じ取れた。
向かってきた男を抱き締める形で、その空っぽの体を受け止める。

―――自然に動いた指から発生した高圧電流は、彼の神経を、操りの糸を完全に焼き切ったらしい。



ガクン…ッ。



屍はもう、動かない。

じゅ、と物質が焦げる臭いが鼻孔を埋めて、それではない刺激により、瞳に張る水の膜が厚くなった。


(求めたものは、こんなものじゃなかった)




「…ごめん、ね」

彼の顎が、倫子の肩に落ちる。

完全に弛緩してしまった大きな体を支えきれず、倫子が後退されば、ズルリ、と男の体は床に溶けた。


―――もう、動かない。



(あぁ、私、は…)





「…ごめんなさい、」

床に転がる男の肩が乗っていた爪先をそっと引き抜き、倫子は消えそうな声でそう泣いた。

震える肩をいからせて、項垂れる。



ポタ、リ。

ポタ…。



「…っ、」


嗚咽と赤い滴が、眠る男を静かに汚していた。






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