AEVE ENDING
(―――あぁ、また泣いてる)
倫子の背中を見つめながら、雲雀は双子の二方向からの攻撃をするりと避けた。
本当は、今すぐ双子などぶち殺して、彼女に触れたいのに。
(馬鹿馬鹿しい…)
あの傷付いた愚か者を慰めたいと思ってしまう自身が、怨めしかった。
(いつから、)
―――そうだいつから、こんな想いを抱くようになった?
ガキィイン…。
能力の摩擦が、物理的な壁となってぶつかりあう。
豪々と土煙が舞う中、一先ず雲雀は双子から距離を置いた。
二対一。
実力差で言えば雲雀が優位ではあるのだが。
(…雲雀様、どうか彼女を連れて逃げて下さいまし)
双子の片割れ、リィの声が頭蓋に響く。
本来二重のストッパーを掛けている雲雀には届く筈のない他者のテレパスだが、闘いのなかで神経が過敏になっているらしい。
双子の必死な訴えを、脳波がいちいち律義に拾っていた。
(…いつから、そんなことなかれ主義になったの)
初めて彼らと会った時は、それはもう異常なほど「雲雀」という存在に執着していたのに。
(…桐生様の本来の目的が吐露された今、我々は雲雀様に危害を加える気はありません)
ロゥが雲雀に向かって手を翳せば、その指先から圧縮された気泡が飛び出す。
それは宙を走るうちに空気中の水分を集め、針ほどの強烈な水鉄砲と化した。
(僕らは、桐生様の本来の願望など知らなかったのです)
勢い良くこちらへ発泡された水泡が、雲雀の滑らかな頬を掠める。
―――傍観する主の手前、本気で闘う振りをしながら。
(…それで僕が納得すると思うの?)
殺意も悪意もない。
在るのはただ、「神」への誠意だけ。
それでも気に喰わないのは。
ガシャン…!
伝統的な教会形式である聖堂に置かれた長椅子を蹴り上げる。
木が軋む音と共に双子に向けたそれは、直撃する前に彼らによって無惨にも砕け散ってしまった。