AEVE ENDING
「全く、やはり最期は人形に頼るしかないか。格の低いアダムなど飼っていても無駄かもしれんね」
ガシャリ、と硝子が踏みつけられる。
床に転がった双子を卑下するような視線に、倫子の眉が自然と寄った。
「…あんたに従って、ボロボロになった奴等だよ」
不愉快だ、と言わんばかりに低く吐き出す。
(相変わらず、お人好し…)
「やめたら。言っても無駄だよ」
牙を剥き出して唸り、今にも噛みつかんとする野犬さながらの倫子を、垂れた後れ毛を乱暴に掴むことで雲雀は留めた。
痛い、と叫ぶ声は無視して。
「全く…、君は本当に詰まらないペットを飼っている。敵の度量も見定められず、ただ吠えるしか脳のない雌犬ではないか」
倫子へと、桐生の嘲る眼が向けられる。
喉を不気味に鳴らす、冷血な人形遣い。
その目を受けて、倫子が苛立たしげに唇を咬んだ。
そんなふたりをそれぞれ一瞥し、雲雀はさも下らないと鼻を鳴らす。
「貴方に言われなくても、橘が馬鹿で間抜けなのは承知してる」
「おい」
冷ややかに発された声は教会の天球に木霊し、空気にさらりと融けていく。
反論しようと口を開いた倫子の口を素早く塞げば、桐生と雲雀が声もなく睨み合った。
「…君には、失望したよ」
「もとより期待に応えるつもりもない」
ピシリ、と音を立てて乳白色の壁を彩る極彩のステンドグラスに亀裂が入った。
「―――…っ、」
全身を蝕む悪寒に、倫子が息を飲む。
ぞろりと爪先から這い上がる、鋭利な刃物に神経を切り裂かれるかのような、激痛。
「いいのかね?君が力を多少なりとも解放すれば、彼女はそれこそただの屍となる」
桐生が嗤う。
雲雀は片眉を釣り上げると、横に立つ倫子を一瞥した。
「橘」
「…なに、」
ゾ、とするような白い肌が雲雀の視界を焼く。
―――蒼白となった肌に走る傷は目立ち、浅黒い痂と施術痕がこの世のものとは思えないほど、美しく浮き出ていた。