AEVE ENDING





「…あ、頭痛いし、裸だし、それに」

私の醜いすべてが露見する。
神による結末など、知りたくもない。



「…それに?」


―――それに。



「あ、あんたには、もう、会いたくなかった、し……」

見てる。

醜い傷、ひとつひとつを。



『知ってたよ』

ぜんぶ、知られたんだ。
死ぬまで秘めていたかった過去を露見されて、曝されて、よりによって、一番知られたくない相手に。


『倫子は、修羅をどうしたいの?』

知らない。
そんなの、考えたくもない。


『…修羅は、倫子に』

だって、修羅じゃない。
雲雀は、修羅であって修羅じゃなかった。



『どうしたい?倫子』


―――どうもしたくない。

だから。



「あんたなんかとは、も、もう、口も聞きたくない…」

(嘘で、本当で、嘘で)

嘘を吐く眼と曲がることを知らぬ視線が、痛い。



「だからもう、関わるなよ…」

繋がりを全て断ち切って、そしてなにもなかった頃から始めればいい。

アダムであり人間である私自身。
橘倫子も、修羅であり修羅じゃない雲雀も、なにもかも、無に返して。


「もう、こんな虚しい思いはしたくない…」

走る傷ひとつひとつが忘れるなと叱咤する。

雲雀を恨み、その身内を血祭りに上げろと胎内で囁くどす黒いそれを消す術など、私は知らない。


(…雲雀の傍にいれば、私は間違いなく、)


いつか、こいつを殺したくなる。
いつか、こいつを殺せなくなる。

彼に遠慮し情にほだされ、最も憎む彼らを無様に赦してしまう日がくる。


―――それだけは、「私」が赦してくれない。
この気高く一辺の曇りない男の前でだけは、無様な真似はしたくないというのに。

(雲雀が私にひとつ声を掛けてくれるだけで、赦された気になってしまうから…)

それは、誰かの罪への、己の罪への、そして置いてきた家族への、冒涜であるのだ。


―――だから。





「…もう、あんたとは」


あんたとは、歩んで行きたくない。

泣かないように力を込めた肩が、ほんの少しだけ震えた。

自らを傷付けて憐れむような感覚に陥りながら、雲雀の決断をただひたすらに待っている。





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