AEVE ENDING





雲雀は終始、無言だった。

ただその揺るがない眼だけは厚い雲に透けて、いつものように英知を湛えていたけれど。

(…もう、見るな)

頭が、おかしくなる。




「君が、眠りこけてる間…」

そうして圧力の掛かる静寂にも疲れてきた頃、雲雀がぽつりと溢すように口を開いた。

倫子は俯けていた顔を上げて、バスタオルの隙間からそっと雲雀を見やる。
いつの間にか立ち上がっていた雲雀の目線が、きっちりと倫子の目を捉えていた。


「桐生が、言ったよ」

何故、神がこのように醜悪ななり損ないに執着するのか。

これは、君の姿と心の臓を借りた仮初めの神であり、存在するだけでそれは君への冒涜となる。


「―――この世のものとは思えぬ醜悪な肉塊の姿になった時点で、彼女はその呪われた生を終えるべきだったと、」


(…静かに語るそれは、確かに私を罵倒し侮辱するもので、ねぇ、でも、私は)



「どうでもいい…」

ぽつり、と吐き出されたそれは自分の声はどこか無機質で、色味を帯びない。


「桐生が言った言葉なんて、あいつの考えなんて、」

そんなこと、どうだっていいんだ。

あんな男なんて必要としてない。
そんな言葉が欲しいんじゃない。

―――私が、私がただ、胸が痛むほど望むものは。



「……私は、あんたの言葉しかいらない。あんたの考えしかいらない。醜い私を見て、隠してた過去を見て、あんたがなにを思ったか…」


―――それだけでいいのに。




「…わ、わた、し…は、」

消化しきらない想いが喉に詰まって、堰き止められていた全てが、痛くて。

(こんな醜い我儘を吐露して、そして、拒絶されたら?)



―――それでいい。


もうなにも、残らない。
残らなくていい。

そうすれば。


「…、」

私には、もうなにも残らなくていい。

(最初から、なにも無いほうがずっと楽だった)


 ··
「雲雀」なんてもの。




「もう、どうでもいい…」

震える唇からただひたすら、痛みだけが吐き出されてもう、自分でもどうしようもない。

もう、見ないで、早く出ていってよ。
もう、なにも、聞きたくない。




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