AEVE ENDING







『―――死にたい…』


最初で最期の一言は、もう絶対に口にしないと、決めたのだ。


『醜く、罪深い』
『産み出した我々に、果たして救いは在るのか』


―――じゃあ、私は。




「…、あんたにだけは、知られたくなくて、だから、あんたといたら、…もう、痛くて」

ズクリ、と醜く吐き出す度に胸が焼けて腐敗していく。


「…うぇっ、」

もう、なにも、見たくないし、聞きたくない。

(この姿はまるで、殻に閉じ籠って目を閉じて、耳を塞ぎ、心を閉ざして、全て拒絶しているみたい)

肉塊は、ただ死を待つだけで、よかった。




「…聞きなよ」

たちばな、と霞むような声で名を呼ばれた。

「――…っ、」

気付く間もなく顎を掬われ、無理に上げられた視線の先には、不愉快に寄せられた眉と、横一本に結ばれた唇。

「さっきから放ってれば、莫迦みたいに好き勝手喚いて、煩い。…殴られたいの」
「……いやら、」
「なら、黙って聞いてて」「…あい」

いいこ。

ちゅう。



「っ、」

素直に頷けば、下睫毛に溜まっていた涙に優しく吸いつかれた。
慰めるように、繰り返し繰り返し、赤くなった目尻を柔らかな唇で撫でられる。

両頬を包まれて、髪を撫でられて、静かな眼に、喰われそうになって。

妙に落ち着いて、ふ、と息を吐けば。



「聞ける?」

倫子の状態を事細かに観察している雲雀が、窺うように倫子を見ていた。

その目が優しく感じて、素直になるのが難しい。


「…やだ」
「何様?」
「いた!だって!」
「だって、なに」

睨むわけでもない、真摯な眼が、こわい。

―――だって。



「…怖い。あんたになにを言われるのか。…こわいんだよ」

考えて、再びひくりと肩が震えた。
正面から、呆れた溜め息が漏れる。

脅える理由なんて、なにひとつないくせに。




(―――他人に触れることすら厭うこの僕が、此処までしてるっていうのに)



聞きなよ、ちゃんと。


自分の中の臆病な声もいらない。
僕の声だけで生きていけばいい。





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