AEVE ENDING






(…そうして繰り返された産出、交配、回帰の末端が、「アダム」の誕生に繋がったのだ)

そこに血生臭い、ひとりの少女の、いいや多くの、憐れな犠牲があったことなど、誰も知らない。


―――けれど。




「あの子は知っていたな。我々が教える前から、自らの宿命を、使命を」

それは、破壊の遺伝子を持ちながら、「運び」の役目故にそれを発揮できずに無念のまま朽ちていった祖先たちの強い思いが彼に刻み込んだのか。

宿命を、使命を、決して忘れるな。

それは「呪い」だ。




(君が、)

世界に絶望したなら終焉を。

(けれど君が、この世界に希望を見たのなら)

子を成し、次に引き継げ。



「何世代にも渡って、彼らは終焉を迎えるために生きてきた。この醜い世界にただ絶望しか見い出せず、破壊の遺伝子を持ってはいるが、次に残すための無力な繋ぎのパーツとしての己を呪い、それでも忠実に確実に、繰り返してきたのだ。この世界の真偽を、人の真価を確かめるために」

そうして引き継がれた、最も濃い破壊遺伝子を持つ者。


『―――奪いなさい。すべて、あなたのものよ』







「慶造、お前は賭けていたのだろう。奴をヒトの手に渡し、ヒトの暖かさに触れさせ、その陰惨な宿命を、変えることができるように」

共に生活して情が移ったわけではなかった。

彼は幼いながらそんな隙は露とも見せず、なにより幾田家は、破壊遺伝子を持つ「彼」を守る位置にある。


(―――けれど)


その冷たいまでに完璧な「神」が、あまりに、憐れで。

まだ歳端もゆかぬこどもが、暗く重い世界に押し潰されないよう、堪えている。


「…そうだな。変えて欲しかった。地球の命運も、破滅にしか向かえない、自らの業も」

そうして願い、せめて、ただのこどもとして生活できる環境を整えた。




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