銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「此で支配術は儂の物だ!!」

ヴェルディは勝ち誇り、笑った。

余程嬉しいのか?

歓喜の剰り、狂ったかの様にヴェルディは叫び続けた。

「ミサを……美紗を返せ!!

私の、私の君主を……

……私の大切な人を……返せ!!」

わなわなと震える肩はさっきまでの怯え、恐れていたのとは違う。

怒りを押さえきれずに、露わにしているのだ。

『飛べ。

夢の狭間に。

謳え。

大樹の亡き今に。

歪めよ、グレア・ラアスト・ブレイク。』

グレア。

死神の最上級禁術。

死界との狭間を開門し、自由に死界の生物を召喚する。

しかし、死界の生物は死んだ者達。

無闇に生界に召喚し、連れて行くと、一度味わう生界の魅力に死者達は虜になる。

以前、禁術を使い召喚した死者は生界にまた戻りたくてしょうがなくなり、死神を殺し、禁術の知を死神から強奪した事があった。

それ以来、此のグレアは禁術となったのだ。

「死界の赤き魔物よ、答えよ。

我はキャルナス、貴女の対。

目覚めよ出でよ。

赤月の姫!」

甦ったのは、仄かな赤い髪の女。

真珠の様に透き通る肌、輝く宝玉の瞳。

誰もが憧れる、死してなおも夢の美貌の持ち主。

「赤月 万里。

只今見参、なんちゃってね。」

死者は大抵は気持ち悪い、原型を留めていない溶けた様な躯をしている。

だが、神々……正確に言うと前代支配者・爾来に愛されし彼女は特別だ。

“美しい”空蝉……彼女は其れだ。

「キャルナスさんー、この度は生界への召喚ありがとねー!

丁度退屈してたの。いい暇つぶしになる!」

大人びた外見には、似つかわしくない幼い内面。

でもキャルナスは知っている。

人に気を遣わせない、第一に人の事を考えるのが彼女。

彼は何度も彼女の忍び音を聞いた事が有るから。

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