銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「キャルナスさん……全てを投げ捨ててでも、白江さんを助けたいんだね。」

赤月 万里は、そのまま湖から溢れ出る、優しくて高明な桃色の光を一身に浴びると、
地界こと死界に戻って行った。

(美紗、貴女は私の事を気遣って、私の過去を聞くのを拒んでいたんですね。

だったら今、私は進んで話ましょう。)






魔界。

異形の者達の世界だ。

人間界とは何処と無く似ているが、全く違う所も有る。

化け物、悪魔、天使、魔術師、皆魔界を中心に成り立っている。

未知数の魔術……

貴女達、人間には考えられもしない異様な世界だ。

私は、魔界の三大陸の内の一大陸を占める、エルヴァータという王家と血筋があった。






『ママー! おかえりなさい!』

幼い、まだ八つにも満たないキャルナスは、帰ってきた母親に飛びついた。

飛びついた反動で、母親のサリアの黄色の長い髪が、ふわっと波打つ。

『ただいま、キャルナス。元気にしていましたか?』

微笑むサリアは美しく、ターコイズグリーンの瞳を細める。

薄い唇は桜色。

肌は白よりも白い。

ここまで美しい顔立ちの人間は、滅多にはいない。

サリア……彼女もまた赤月と同じく、世界……神に愛されているのかもしれない。

『うん! ボクね、いい子にしてたんだよ!

お夕食も作ったしね、パパが帰ってくるのずっと待ってたしね!』

はしゃぎながら今までどれ程母の帰りを待っていたか、キャルナスは手取り足取り話す。

それを嗜めるサリアもまた、久しぶりに会った息子の成長に、心が弾んでいた。

そう、サリアは都心にある大病院に入院していたのだ。

新たに誕生する予定の次男を、無事出産する為に。

『キャルナス、キャルナスの弟の名前は何がいい?』

冗談混じりにサリアは言ってみたが、キャルナスは考え込んでしまった。

本当は名前がもう決まっているのに。

『うーん……マナ、マナがいい!』

『まな?』

『うん! 人間界でマナは愛って事なんだって!

学校で習ったんだよ!』


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