銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
『ボクがマナを殺したの……?』

頬につたってくる温かいもの。

鼻がツンとあつくなる。

『……』

レイセントは、頷いた。

酷なことなのはわかってる。

でも隠しても何時かはばれる。

だったら今の内に伝えた方がキャルナスの将来の為になる、レイセントの考えは今思えば間違っていた。

『……ぁぁああああ!!』

声を押し殺そうとした。

でも、そうしたら間違え無く感情までも殺してしまうだろうと。

『キャルナスは悪くない。

偶々、打ち所が悪かっただけなんだよ。』宥めれば宥める程、キャルナスの涙は止まらなくなった。

幼い頃に覚えた罪意識。

キャルナスの人生が狂った決定的な由縁だ。

『ママは、ママはボクの事を赦してくれない!

あんなに、あんなに怒ってた……』

レイセントはキャルナスを抱き締めると、言いづらそうに一言、ボソッと付け足すように言った。

『……サリアはな、お前の本当のママじゃ……。』

いや、其処までいう必要は無いんじゃないか?

其れを知ってキャルナスはどうなる?

『……今日は一緒に寝よう。』

ベッドにキャルナスを寝かせると、レイセントはキャルナスが泣き止むまで手を握り続けた。

泣きつかれたのか?

数時間後、朝日が上ってきた頃にはキャルナスは眠っていた。

無事我が子が寝たのを確かめると、次はサリアの元へレイセントは向かった。

「さり……」

とっさにレイセントはサリアの頬を殴った。

「止めてよ……私はあの餓鬼を殺さなきゃ……

マナを殺した彼の子が何故生きるの!?

おかしいわよ……おかしいわよ!!」

目を泣き腫らし、包丁を持った妻が其処にはいたのだ。

「……貴方がキャルナスを連れてきたとき、自分の本当の子の様に愛そうと決めたわ。

瞳の色も髪の色も、彼の子の母親になりきる為に合わせた。

実際楽しかったわよ。何時しか血なんて関係ない、本当の親子に成れた気がした。

でも、本当の子を殺されてまで私は彼の子を愛せないわよ!」

悲痛な最愛の彼女の叫び。

共感するしか無かった。
< 137 / 197 >

この作品をシェア

pagetop