銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
『あなた、私はもう彼の子についていけません。

あんな危険なな子、私の子じゃない。』

サリアは包丁を床に落とし、両手で顔を覆い跪いた。

レイセントはそんなサリアを慰めるしかなかった。

『落ち着きなさい、サリア……

キャルナスを、海峡の軍勢に引き取ってもらおう。』

レイセントの決死の決断。

サリアとキャルナスはもう今までの様な生活をする事は出来ないだろう。

海峡の軍勢……兄の直属の部隊。

キャルナスを引き取ってもらおう。

レイセントがサリアの部屋から出ると、其処にはキャルナスが。

『パパ……』

『キャルナス、解ってくれ。

お前がいると母さんがおかしくなってしまうんだ。』

自分は最低だ。

一人だけサリアの元に残り、我が子を捨てるなんて。

でもキャルナスは優しい子だから、頷いて解って、従うだろう。

『解った、パパ、ママと一緒に迎えに来てね。』

キャルナスは海峡の軍勢の騎士に引き取られていった。

その後、サリアは精神科に入院した。

入退院の繰り返しだったそうだ。

レイセントはサリアに尽くす生活をおくった。

そしてキャルナスが海峡の軍勢を滅ぼしたと聞いたのは、約二年後の話だ。

言うまでもなく、千人もの死者を出し、組織までをも壊滅させた我が子に代わって、責任を取らされるレイセント。

兄の命によって処刑となる。






十年の月日が経った。

千の人を殺めた者は大悪魔になる。

キャルナスも同じだった。

悪界に連れて行かれ、毎日何も、何もしなかった。

死ぬと人は何も食べれなくなる。

だから別に食料には困らない。

他の悪魔の仲間になろうとも思わなかった。

闇一色の世界、棲む場所にも困らない。

ただ、此の躰が朽ちるのを待てばいい、そう思っていた。

『貴方が、キャルナス?』

『……誰?』

現れたのは人だった。

悪魔ではない、人。

綺麗な薄い月の様な髪、着ているのは赤と黒のゴシックロリータ。

『……私は霊螺(れいら)

死神協会の会長様。』
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