銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
!! また、此の声……?






‘世界を滅ぼせる程の強大な力……名を支配力。’

《其れを手にし者は唯一人。》

【君だ。

使わないでどうするの?】






あたしが、支配力を使って……キャルナスを救う……

「キャルナス、動かないで!

支配者の名に命ずる。

我の血肉と引き換えに……」

右手首に躰全体の力を集中させ、詠唱する。

小さな白い光がキャルナスの周りを取り囲む。

「……美紗!!」

キャルナスが喉から辛そうに声を出す。

右手の人差し指を美紗の背後に指す。

「まだだ。支配者。」

「嘘……!!」

何かと思い指された方を見ると、瀕死の状態のヴェルディが。

右腕は消え去り、左脚を引きずっている。

胸に空いた大きな穴から肋骨が見えた。

火傷した顔が醜く歪んだ。

「美紗……残りの支配力でヴェルディを、ヴェルディを倒して下さい……

私はいいから。」

僅かな支配力。

キャルナスを救えばヴェルディを倒せない。

ヴェルディを倒せばキャルナスを救えない。

今がチャンスだ。

此の先、甦ったヴェルディは世界にどんな災厄を齎すか解らない。

でも大切な仲間を見殺しにするなんて出来ない。

吹き荒れる風が美紗を急かす。

決断……

誰にだって難しい選択肢に何時かはぶつかり苦悩するだろう。

かと言って、幼い美紗には此の選択肢は惨すぎて、然も苦悩する暇も与えられない。

一秒一秒が命懸けの世界。

一秒進む度に、ヴェルディが一歩歩む。

一秒一歩分、後戻り出来なくなる。

「あたしは……」
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