銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
美紗はヴェルディに右手を向けた。
「支配者の名に命ずる。」
来る、ヴェルディは美紗の殺気からして絶対に残りの支配力全てを使った術が来るだろうと感じ取った。
「目前の愚者を……」
素速くヴェルディの元へ駆け出すと、彼の肩を掴む。
光矢の躰を元にしているヴェルディの肉体は、美紗より実に小さい。
魔術なら完璧に負けるが、武術ならまだ躰が大きい分、美紗の方が有利なのだ。
「!? 何をする気だ!?」
美紗はヴェルディを後ろへ強く押した。
《ギシャァァアアア》
「紅鬼だと!?」
押された方で待ち伏せていたのは、キャルナスが鎌架によって召喚した、紅鬼。
六十秒契約だったが、キャルナスの魔力が消え、魔界への扉の鎌架が消滅してしまい、帰れなくなったのだろう。
「支配者の名に命ずる。
我の血肉と引き換えに、新たな生力を造り与えたまえ。」
ヴェルディは紅鬼に任せて、美紗はキャルナスの元に戻り支配術の詠唱をした。
金色に輝く小さな雪の様な欠片が、キャルナスを包んだ。
キャルナスの顔色は良くなっていった。
「美紗……」
何故?、と言わんばかりの瞳で、美紗をキャルナスは見る。
「キャルナス、あたしには貴方を見捨てる事なんて絶対出来ないよ。
大事な仲間だもの。
死にたかったとか言わないでね。」
美紗はキャルナスをジッと見た。
目を合わせ、二人は微笑した。
「有難う。
本当は死にたくなんか無かったんだ。
だけど、大切な物を沢山壊してしまって、私は生きる資格を喪った。」
大切な物……
彼にとっては家族との暮らしが何よりも大切で、幸せだったのだ。
其れを幼かった自分が何時の間にか壊したから。
絶望したのだろう。
「生きる資格なんて無いよ。
生まれたら生きなきゃいけないの。
其れは人の義務だから……」
逃げていたのだろう。
自分の罪から。
罪を犯したら、人は償う為に生きなきゃいけない。
悲しい事があったら、しがみついて最後まで諦めてはいけない。
死に逃げてはいけない。
「支配者の名に命ずる。」
来る、ヴェルディは美紗の殺気からして絶対に残りの支配力全てを使った術が来るだろうと感じ取った。
「目前の愚者を……」
素速くヴェルディの元へ駆け出すと、彼の肩を掴む。
光矢の躰を元にしているヴェルディの肉体は、美紗より実に小さい。
魔術なら完璧に負けるが、武術ならまだ躰が大きい分、美紗の方が有利なのだ。
「!? 何をする気だ!?」
美紗はヴェルディを後ろへ強く押した。
《ギシャァァアアア》
「紅鬼だと!?」
押された方で待ち伏せていたのは、キャルナスが鎌架によって召喚した、紅鬼。
六十秒契約だったが、キャルナスの魔力が消え、魔界への扉の鎌架が消滅してしまい、帰れなくなったのだろう。
「支配者の名に命ずる。
我の血肉と引き換えに、新たな生力を造り与えたまえ。」
ヴェルディは紅鬼に任せて、美紗はキャルナスの元に戻り支配術の詠唱をした。
金色に輝く小さな雪の様な欠片が、キャルナスを包んだ。
キャルナスの顔色は良くなっていった。
「美紗……」
何故?、と言わんばかりの瞳で、美紗をキャルナスは見る。
「キャルナス、あたしには貴方を見捨てる事なんて絶対出来ないよ。
大事な仲間だもの。
死にたかったとか言わないでね。」
美紗はキャルナスをジッと見た。
目を合わせ、二人は微笑した。
「有難う。
本当は死にたくなんか無かったんだ。
だけど、大切な物を沢山壊してしまって、私は生きる資格を喪った。」
大切な物……
彼にとっては家族との暮らしが何よりも大切で、幸せだったのだ。
其れを幼かった自分が何時の間にか壊したから。
絶望したのだろう。
「生きる資格なんて無いよ。
生まれたら生きなきゃいけないの。
其れは人の義務だから……」
逃げていたのだろう。
自分の罪から。
罪を犯したら、人は償う為に生きなきゃいけない。
悲しい事があったら、しがみついて最後まで諦めてはいけない。
死に逃げてはいけない。