ダーク&ノイズ
しばらく無言だった恭一は、ひとつ、佐々木に尋ねた。


「呪い……解けるんですか?」

「正直、難しいだろう」

その答えは意外だった。

恭一の知る限り、この佐々木は若いとはいえ、相当な力を持っているはずだと確信している。

その筋の人間に聞いても、おそらく同じ答えが返ってくるだろう。

テレビなどで華やかに取り上げられたことはないが、数々の除霊で実績をあげている本物だ。

それが──

「難しいんですか?」

恭一は顔をゆがめて聞き返した。

「呪いは解くということは極めて難しい。返すことが基本だ」

「じゃあ──」

「いや、返すには呪いをかけられた人に強い健全な心が必要だ。いまの彼女にはそれがない。それに──」

宙を見るような目つきで、佐々木は言葉を選んだ。

「呪いは返されると、その力は倍になって術者に返ってくる。つまり、彼女の友人の呪いを返せば死ぬ。かといって、友人を見殺しにして自分の呪いだけ返そうと望むような心であれば、呪いに負ける」

「じゃあ、救う方法はどっちにしてもないんですね」

「いや、ないこともないが……」


そこまで言うと佐々木は口を閉ざし、物思いにふけるようにコーヒーを眺めていた。


(それを私の能力でできるか?)


その自問自答の行く末は、佐々木自身にすら分からなかった。

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