星屑
「また会えたらさ、奈々に見せてあげたいと思ってたから。」


顔を向けてみれば、その瞬間に唇に触れたもの。


キスをされたということはわかったけど、今更恥ずかしくなりあたしは、目を逸らす。



「奈々は雨の日にトラウマがあるって言ってたね。」


あぁ、と言ってから、うん、と付け加えた。



「ダサいけど、笑わない?」


「笑わないよ。」


あたしは一度、息を吐いた。


そして星空を仰ぎ、記憶の糸を手繰り寄せる。



「ちっちゃい頃にさ、家にあたし独りで、その日に台風が来てね。
窓はガタガタ揺れるし、風も雨もすごくて。」


「うん。」


「そんな時に雷落ちて、停電になって。
あたし、泣きながら布団にくるまって震えてたの。」


「それがトラウマ?」


今までこんなダサいこと、誰にも言ったことなんてなかったのに。


なのに勇介がひどく優しい瞳であたしを見るから、調子が狂う。



「じゃあ今度怖くなったら、俺のこと呼んで?」


「…え?」


「俺は何があっても奈々を独りで泣かせたりはしないから。」


戸惑いながらも、安堵している自分がいる。


例えそれが気休めなだけの言葉だったとしても、勇介は真剣に捉えてくれたから。


だからありがとう、と言うと、彼は口元を緩めて見せる。

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