星屑
勇介は携帯を開き、時刻を確認した。


あたしもそれを横から覗き込んでみれば、とうに日付は変わっている。



「俺、それより前に奈々のお父さんに雷落とされそう。」


おどけたように言う勇介に、



「うち、そういうのいないんだ。」


悲観するでもなく、あたしは返した。


彼はそんなあたしを一瞥して、ふうん、と言うだけ。



「…聞かないの?」


「聞かないよ。
俺、別にそれで何か思ったりしないし。」


普通は大体、触れちゃいけないところに触れた、みたいな顔をされるか、もしくは理由を聞かれたりするのだが。


でも勇介は本当に、興味の欠片すらもなさそうな顔をしていた。



「ママさ、不倫してあたしのこと産んだんだ。」


「そっか。」


「だから父親とかいないけど、毎月その人、養育費振り込んでくれてんの。」


「うん。」


漏らすように、気付けば言葉にしていた。


勇介はただ相槌だけを打ち、でも何かを言うこともない。



「18で結構良い企業に入社して、お偉いさんと不倫して子供作っちゃってさ。
昔っからママの所業には困ったもんだよねぇ。」


何であたしを産んだんだろう、とは思うけど、ママは別にお金が欲しいからってわけじゃないのは、ちゃんとわかってる。


それにあたしは、それなりに愛情を持って育てられたのだろうとは思うから。


笑い話のように言ってみたのに、勇介は空を仰ぐ。



「生まれてきたらからには、人生は奈々のモンっしょ?」

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