星屑
「…ナナ、さん?」


声をかけてきたのが、土屋さんだった。


10ほど上の方だけど、いつも紳士的で、優しい目をしてくれる人。


口調は柔らかく、こんなに年下の自分をいつも心配してくれ、真剣に話を聞いてくれる。


彼もまたお店のお客様で、突然辞めた自分を案じてくれていた。



「…恋人、ですか?」


土屋さんは、真哉を見て問うてきた。



「いえ、友人です。」


「静香、俺仕事行くから。」


自分と彼を見て何かを感じ取ったのか真哉は、気を使うように言ってくれる。


頬は少し腫れるように赤くなていて、泣いてしまったことさえ、土屋さんには隠せないのかもしれない、と思った。



「少し、お話が出来ませんか?」


お店に来て、指名してくれるだけの関係だ。


そこには人に言えないようなこともなく、店外で顔を合わせることさえ初めてだったのに。


どうしてあの時、断らなかったのだろう。



「店を辞めた理由、差し支えなければ聞かせていただけませんか?」


喫茶店で向かい合い、いつものように低姿勢で聞いて来る。


頬の痛みに、そんな優しさが沁みたのかもしれない。



「子供が出来ました。
でもさっき、ひとりで育てていこうと決めました。」


言葉にすれば、少しだけ強くなれるのかもしれない。


決意を固めたように言うと、当然だけど土屋さんは、驚いたような顔になる。

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