星屑
だから別に関係なくない?


そう付け加えられ、やっぱり少し、驚いた。


時々この人は、妙に大人びた顔をすることがあって、どうしてもそういう部分に戸惑ってしまう。



「うちさ、夫婦仲最悪なんだよね。」


そう言って、勇介は煙草の煙を吐き出した。



「父親は仕事人間で、母親はお稽古だか何だかで奥様連中とずっといるし?
で、顔を合わせりゃ無視か喧嘩か。」


だから喧嘩のない奈々のうちの方が良いね、と彼は言う。


思わず言葉に詰まってしまった。


勇介が夜にふらふらとしているのは、もしかしてそんな家庭が嫌だからなのだろうか。



「俺さ、親父憎んでんだよね。」


その理由は、さすがに聞けなかった。


そっか、と返すことしか出来ず、沈黙が重い。


勇介の瞳は恐ろしいほど冷たくて、そして感情がないようにも見える。


両親が揃っていても、それはそれで大変なようだ。


彼は煙草の煙があたしの方に流れないようにしてくれ、やっぱり優しい男なんだと思うが。



「俺、煙草ないと口が寂しくてさ、だからチュッパ食ってんの。」


「それってめちゃくちゃ健康に悪くない?」


「健康って言葉、奈々には似合わないね。」


いや、やっぱこいつは失礼なヤツだ。


呆れるように肩をすくめ、空を仰いだ。


満天の星の下、今更あたし達が互いのことを話すだなんて、順番がめちゃくちゃだ。

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