星屑
刹那、後ろから抱き締められ、心臓が跳ね上がった。


恐る恐る顔を向けてみれば、その瞬間に唇を奪われる。


どうしてこの人は、いつもこうなんだろう。



「ねぇ、勇介って“友達”にはみんな、こういうことして回ってんの?」


「奈々にしかしないよ。」


「じゃあ、何であたしにはこういうことすんの?」


なのに答えは聞かれない。


ため息を吐き出そうとしてみれば、今度はその瞬間、体は反転し、壁に押し当てられるような格好になる。


空の青さをバックに、勇介は近過ぎる距離で目を細めた。



「だって奈々には欲情しちゃうんだもん。」


だもん、って。


それってつまり、あたしはセックスの対象ってことで、喜ぶべきなのか、どうなのか。


不貞腐れるように顔を背けたはずなのに、気にすることもない勇介は、また唇を触れさせる。


でも、彼がそれ以上何もしないのはわかってる。


初めて会った日のあの一度っきりの行為以来、勇介は絶対にあたしにキス以上はしたりしないから。



「可愛いね。」


だからそんな言葉に、勘違いしそうになる。


気を許してしまっているんだろうことも、こんなことで安堵感に支配されていることも、何もかも。


まるであたし達は、人目を忍んで密会でもしているかのよう。


鮮やかなほどの空の青さは眩しいほどに美しくて、思わずあたしは目を閉じた。

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