星屑
抱き締められた状態でするキスは、ひどく心地の良いものだった。


愛されている気分になって、ほんの一時の居場所がこの腕の中に出来た気になるから。


このふわふわとした男を、捕まえているような錯覚に陥る。


なんて、どうして勇介といると、いつも馬鹿みたいなことを考えてしまうのか。


例えばそれは、チュッパを食べることがごく自然なことのように、彼の存在を受け入れている自分がいる。



「俺さ、奈々とこうしてると、何か生き返る。」


充電してるみたいに、と彼は言う。


目を開けてみれば、ひどく気持ちの良い風に吹かれた。


暗めのアッシュブラウンの勇介の髪は、あたしの首元をくすぐる。


そしてそこにひとつ、唇が落とされた。



「好きだよ、奈々。」


それがどれほど無意味な言葉なのか、あたしは知っているんだ。


勇介の呟く“好き”は、最初からずっと変わらない。


きっとそれは、ご飯が美味しい、というレベルの話に似ているのだろう。


青すぎる空の色が、何故だか物悲しくも見えてしまう。



「ねぇ、またあの星見に連れてってよ。」


「良いよ、約束。」


そっと小指の先を絡め合い、小さく笑った。


例えば携帯の番号ひとつ知らない間柄のあたし達なのに、と思うと滑稽だけど。


だからいつも偶然というものにだけ頼り、それはひどく不確かな関係だった。

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