星屑
突然にドアが開き、顔を覗かせたのは沙雪だった。


思わず怒りを忘れ、キョトンとしてしまう。



「…さゆ、どしたの?」


「さゆねぇ、お腹痛いのー。」


そう言って、彼女は口を尖らせてソファーに腰を降ろす。


何だか教室に戻るタイミングを逃してしまったわけだが。



「さゆさぁ、すーぐお腹痛くなるんだよー。
ストレスとかぁ、疲れたりしたらきゅうってなんのー。」


一見馬鹿っぽくて図々しいように見える沙雪だが、これで結構繊細な部分があるのは知っている。


人懐っこい反面、妙に周りのことを見てたり、他人のことを気にしたり。



「んで、今も痛いんだ?」


「うん。」


ちなみに、あたしは単に生理前だったというだけなのだが。



「あ、そういえばさっき、勇介くんとすれ違ったよー?」


思わずびくりと肩を上げた。


先ほどのことを思い出し、あそ、と曖昧にしか笑えないが。



「何かさぁ、すんごい怒った顔してたから、さゆ声掛けられなかったんだ。」


「そっか。」


「てか奈々、喧嘩でもしたのー?」


喧嘩ではなく、あれは勇介が一方的に、しかも理由もなく怒っているだけのこと。



「何でそこであたしが出てくるのよ?」


「だって勇介くん、ここから出てきたように見えたんだもん。」


間延びした喋り方の、沙雪の台詞。


勘違いだよ、と返すことしか出来なかった。

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