ひだまり
「この前はカナに負けたから今日は勝てるかな」
エリは一昨日の1000メートル走で一位をとった私から、
何か一つでも勝ちたいと思っているらしい。

「さ、エリ行こうよ」
体育の時間に遅れたら、渡辺先生のお説教はただ事ではない。
大急ぎで体育館へ向かった。


いつもは、すでに時間前から腕組をして生徒を待つ渡辺先生の姿があるのだが、
今日は見当たらなかった。

キーンコーンカーンコーン

チャイムと同時に先生が現れたのだが、隣には見慣れない男性が立っていた。
「みんなも知っていると思いますが、私、渡辺は来月から産休に入ります。
よって、代理の先生が来てくれましたので紹介します。」

そういえば、あまりお腹が目立ってはいなかったが、
渡辺先生がそろそろ産休らしいと生徒たちの間で噂になっていた。

代理の先生という男性がゆっくりと一歩前に出てきた。
「渡辺先生の代理で、一年間君たちの体育を担当することになりました
佐野 希です。よろしく」
と言うと横から渡辺先生が付け加えた。
「23歳の若~い先生です。ちょっとアイドルにいそうな感じでしょ?」
と、佐野先生をからかっているようで
生徒たちからも笑いが起こっていた。

「では、今日は佐野先生も一緒に残りの体力テストをしますので、
順番に行ってください」
そう言うと、生徒たちは順番に行い始めた。




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