浅葱色の瞳に
土方さんの唸る様な低い声が、あたしの胸の鼓動の代わりに空気を振動させた



反射的に土方さんの方へと身体を翻す



…何が気に入らないのか…逸れとも顔の造りが元からなのか…



相変わらず気難しそうに目を細め、此方を睨めつける土方さんの顔の表情は先程とは差ほど変わらない





只、土方さんの醸し出す雰囲気に何とも言い表せられない微弱の変化が生じた事は、あたしでも感じ取れた





「…どうされたのです、土方さん………"らしくもない"…」



「………聞こえねェのか、出て行けと言っている」





怒ってる…?





空気が緊迫する



心無しか、沖田さんもピリピリと殺気立っているようだった





「はいはい…分かりましたよ…出て行けばいいんでしょう………あんまり苛々してると早く呆けちゃいますよー」



「てめッ…総司ッ!」




「きゃー鬼副長がご乱心になられたっ…さ、鞠絵さん…噛まれない内に…」





そう言うと沖田さんはあたしに手招きをしながら漆黒の闇を描く障子戸の外へと吸い込まれて行った





「あ…!ちょっ…!………どうも有難う御座いました!お世話になります!」



近藤さんと土方さんに頭を下げお礼を言うと、取り残されない様に慌てて沖田さんの後を追い掛け、近藤さんの部屋を後にした





…気のせいかな…?






ふと立ち止まり、後ろを振り返る







近藤さんの部屋から溢れ廊下を照らす灯りは障子戸が閉められる事に寄り照らし出す範囲を次第に細い線にしてゆく








「鞠絵さーん、どうかしました?」





小さく抑えた沖田さんの呼び声で我にかえると





沖田さんの背中を闇の中で目を凝らして探した
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