恋時雨~恋、ときどき、涙~
駅前はカラフルだった。


薄暗い夜の始まりの街に、たくさんの傘が花のように咲いている。


雨に濡れた都会のネオンのようだった。


わたしは、亘さんと待ち合わせ場所のカフェに入った。


ほろ苦いコーヒーの香りが、鼻先をくすぐった。


店内は落ち着いたモダンカラーで、外が雨だからなのか満席になっている。


わたしは、亘さんの姿を探した。


店内をぐるりと見渡していると、若い女性の店員さんがわたしに声をかけてきた。


可愛らしい、おちょぼ口が動く。


「いらっしゃいませ。おひとり様ですか」


わたしは首を振って、鞄からメモ帳とボールペンを取り出した。


その時、肩を叩かれて顔を上げると、スーツ姿の亘さんが店員さんに何かを言っていた。


店員さんはにっこり微笑んで、カウンターの中へ戻って行った。


「来てくれて、ありがとう」


わたしは目を丸くして、亘さんを足元から頭のてっぺんまで、舐めるように見た。


わあ……別人みたいだ。



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