恋時雨~恋、ときどき、涙~
確かに、周りの観客も似たり寄ったりの服装をしていて、さほど目立たない。


でも、わたしはすぐに分かった。


たぶん、健ちゃんも。


静奈は、独特の雰囲気を持っているからだ。


相変わらずブルーグレーのカラーコンタクトのせいなのか、そのスタイルの良さなのか。


異国情緒が漂う、ミステリアスなオーラなのだ。


わたしは健ちゃんの手をほどき、静奈のところへ行こうとした。


でも、健ちゃんに止められた。


〈何で? 黙っていたら、静奈は帰ってしまうかもしれない〉


わたしが眉間にしわを寄せると、健ちゃんは「その心配はねんけ」と笑った。


「久しぶりに好きな男を見れたんだ。ゆっくり、見させてやろう」


〈でも〉


わたしは、健ちゃんのダウンジャケットの裾を引っ張った。


「見てみろ。静奈ちゃん、順也に夢中だ」


あれだけ夢中なのに、帰るわけねんけ。


健ちゃんはそう言って、笑った。


わたしは、健ちゃんのダウンジャケットの裾を掴んだまま、向こうに視線を投げた。


くるくる、くるくる。


ミラーボールのように表情を変える静奈に、わたしは夢中になった。


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