恋時雨~恋、ときどき、涙~
静奈のミステリアスな瞳は、ずっと、たったひとりだけを追い掛け続けていた。


この宇宙には数えきれないほど、人間や動物が存在するのに。


静奈はの瞳は、背番号7を背負った車椅子の選手だけを追い掛けていた。


順也にパスがまわる。


静奈が手すりにしがみついて、息を呑む。


順也が、仲間にパスを出す。


静奈は長く息を吐き出し、少し、安堵したような顔をした。


思わず、あっと声を上げたくなるような事が起こった。


相手チームの選手と衝突して、順也が車椅子から落ちてしまったのだ。


静奈は、今にも手すりを乗り越えてコートに飛び降りてしまいそうなほど、前に身を乗り出した。


顔が青ざめている。


順也は顔を歪めながらコートを這いつくばり、転倒した車椅子によじのぼり、また車輪を回した。


静奈がぱっと笑顔になる。


チームメイトたちが順也の肩を叩いて、すいすいコートを駆け回る。


車椅子同士が衝突してしまうのは、よくある事なのだ。


それでも、誰もへこたれない。


なに、くそ、まだまだ、とふて腐れることなく車椅子を走らせる。


順也にパスが回るたび、静奈は息を呑んだ。


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