恋時雨~恋、ときどき、涙~
順也が車椅子を走らせれば、静奈の目も同じスピードでコートを走る。


順也がコケるたびに、静奈は手すりを握って力を込めた。


順也が起き上がるたびに、静奈も一緒になって歯を食い縛った。


順也がシュートを決めれば、静奈は誰よりも歓喜にわいた。


仲間と肩を抱き合う順也の背中を見つめながら、静奈は嬉しい顔をした。


時折、切ない顔をしながら、静奈は背番号7を追い掛け続けた。


試合は、終盤を迎えた。


42対35


残り時間は、あと、2分弱だ。


負けているのは、順也たちのチーム。


時間からいって、逆転は無理だろう。


順也たちのチームが、ここでタイムをとった。


ベンチに戻ってくる時、順也は笑顔で、わたしと健ちゃんに手を上げた。


わたしは焦った。


静奈が来ていることを、順也に教えなければ。


わたしは手すりから身を乗り出し、向こうを指差そうとした。


でも、それを止めたのは健ちゃんだった。


健ちゃんはわたしを退けて、順也に手話をした。


「頑張れ」


順也は苦笑いをして、こぶしを突き上げた。


〈なんで! 静奈がいるのに。教えてあげるくらい、いいのに〉



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