恋時雨~恋、ときどき、涙~
わたしが睨むと、健ちゃんは呆れた顔をした。


「女には、男の気持ちが分かんねんけ」


わたしは、その意味が本当に分からなかった。


顔を上げると、静奈がこっちに気付いたらしく、見つめていた。


静奈の両手が小さく動く。


「順也、すごいね」


わたしは微笑んだ。


〈かっこいいでしょ〉


静奈が頷く。


わたしたちはコートを隔てた空間で、微笑み合った。


静奈とは、それ以上の会話をしなかった。


タイムが終わり、試合が再開された。


試合再開したとたんに、ゴール下にいた順也にパスが回った。


静奈が口を開けて、息を呑んでいるのが分かった。


順也はボールに両手を添えて、丁寧に放った。


順也らしい、優しいシュートだった。


ボールはボードで跳ね返り、メッシュの中を通過してコートに落ちた。


順也のこぶしが高々と上がった。


静奈は我を忘れたように、歓喜に狂っていた。


試合は結局、46対37で幕を下ろした。


選手たちが平行線を描き礼をすると、観客たちも一気にはけ始める。


わたしは、静奈を見つめた。


静奈もこっちを見ていた。


とても、穏やかな笑顔をしている。


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