恋時雨~恋、ときどき、涙~
「歩けない、だから、なに? 関係ない」


「普通のデートもしてあげられない。しーは、こんな大きなお荷物、抱えてもいいって言うの?」


静奈の瞳は、どこまでも真っ直ぐだった。


「もし、順也の足がお荷物だっていうなら、こんな大切なお荷物はない。喜んで、背負う」


きれい。


順也の障害を、大切なお荷物だ、と胸を張って手話した静奈を、美しいと思った。


泣きっ面のまま固まってしまった順也に、静奈は手話を続けた。


「私を、幸せにする自信があるんでしょ? それくらいの覚悟で、あの手紙を書いたんでしょ?」


その時、順也の背後に年輩の男性が立った。


順也と同じ、ガソリンスタンドの制服を着ている。


店長さんだ。


店長さんが順也の肩を叩いて、何か話し掛けているようだ。


順也は「すみません」と口を動かして、ガラス張りの前から姿を消してしまった。


怒られてしまったのだろうか。


わたしと健ちゃんは、目を合わせた。


健ちゃんも不安気な顔をして、首を傾げた。


でも、すぐに「あ」と健ちゃんは言い、静奈が立っている方を指差した。



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