恋時雨~恋、ときどき、涙~
静奈の目が大きく開く。


「だから、もう少し、待ってくれないかな。もっと稼げるようになるから。今の給料じゃ、指輪、買えないんだ」


静奈が頷いた。


すると、順也は首からマフラーを外して、1本だけ毛糸を引き抜いた。


順也が何をしようとしているのか、わたしには分からなかった。


静奈がぽろぽろ涙をこぼしながら、左手を突き出している。


どうやら、健ちゃんも2人の行動が気になって仕方ないらしい。


健ちゃんは、わたしを押しのけてダッシュボードに身を乗り出した。


わたしも、負けじと身を乗り出す。


半ば、ケンカのように陣地争いをしながら、わたしたちは身を乗り出し合った。


順也は、静奈の左手に何かをしているようだった。


その行為を終えたあと、順也が恥ずかしそうに唇を動かした。


「今は、これで我慢して。必ず、しーの指に似合うのを買うから」


静奈は泣きながら左手を右手で包み、しっかりと頷いた。


健ちゃんが、わたしの肩を小突いた。


お互いにダッシュボードに身を乗り出しているので、かなり狭い。


わたしはフロントガラスに額を打ってしまった。



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