恋時雨~恋、ときどき、涙~
健ちゃんが、わたしの手のひらに「ひ」と小さな「ゆ」を書いた。


わたしは目を凝らして、健ちゃんの唇を見つめた。


「ヒュー、だんけ」


ヒュー、ドーン。


ヒュー、ドーン。


楽しそうに、何度も繰り返して健ちゃんが言う度に、同じタイミングで夜空に花が咲いて、散った。


幾つも、幾つも。


いつ上がって、咲いて、散るのか。


毎年、それも知らずに花火を見て、きれいだとわたしは思っていたのだ。


ヒュー、ドーン。


健ちゃんから教わったそれを知ってから、花火がますますきれいに見えた。


楽しい友達ができた。


健ちゃん。


この人と一緒に居れば、たくさんの音を見ることができる。


それが嬉しくて、わたしは健ちゃんの横顔ばかり見つめていた。


健ちゃんがこっちを見て、何かを言ったようだ。


でも、わたしと目が合ったとたんに、顔を背けてしまった。





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