恋時雨~恋、ときどき、涙~
それらを全部ひっくるめて、お母さんはきっと、わたしの何かを感じとったに違いない。


だから、何も聞いてこないのだ。


それはもう一週間も前のことで、もう、旅立ちの日は3日後に迫っていた。


静奈とはあれから、ぎくしゃくしたままだ。


ただでさえ気まずくなっていたのに、それに輪を掛けるように、わたしは切り出した。


〈わたし、東京へ行く〉


静奈は目を丸くして、じっとわたしの両手を見つめていた。


〈今まで、本当にありがとう。順也と幸せになって。わたしは、それだけを祈ってる〉


わたしと静奈の他は誰も居ないゼミの教室で、静奈が聞いてきた。


「いつ、こっちへ戻って来るの?」


わたしは肩をすくめて、首をふるふる振った。


分からない。


しばらく戻らないつもり。


〈もしかしたら……もう、戻らないかもしれない〉


わたしの手を見つめていた静奈が、突然、豹変した。


「何で? 何で急にそんなことになるの? 何で……何も相談してくれないのよ!」


いつも冷静な静奈が、顔を真っ赤にして乱暴に両手を振り乱す。


〈ごめんなさい〉


言い訳すらしないわたしの肩を突き飛ばして、


「何で、何も言ってくれいのよ! もう、真央なんか知らない!」


静奈……。



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