恋時雨~恋、ときどき、涙~
生きとったらな、人生はなんぼでもやり直しがきくもんやで。


生きとるんやから、何回でもやり直しがきくんよ。


真央は辛いんやな。


辛くてどうにもならん、思うたら、一度逃げてみたらええんよ。


逃げる事は悪いことやない。


それで気付くことがわんさか出て来るわ。


そっからまたやり直せばええやんか。


間違いないで。


「一度どん底まで落ちた人間が言うてるんや。間違いないで」


そう言って、幸はわたしの両手を優しく握った。


「あと一年しないうちに、うちも東京へ行くんや。そん時に笑うて会えたらええなあ」


幸はずーっと、笑っていてくれた。


そして、メモ帳にとあるお店の住所と名前を書いて、わたしにくれた。


「ここで、うちがいちばん信頼しとる先輩が働いとる。困ったことがあったら、そん時はここに行って、小日向(こひなた)ゆう女の人に頼るとええよ」


真央のこと、言うておいたるから、そう言って。


順也や静奈、中島くんとぎくしゃくしたまま別れるのは心残りだ。


けれど、時間は残酷で刻々と過ぎて行った。


もう、5月29日か。


天井のランプがくるくる回って、点滅した。


ハッとして、わたしは急いで切符をポケットに押し込むと、玄関へ向かった。



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