恋時雨~恋、ときどき、涙~
ランプのスイッチを切ってドアを開けると、笑顔の健ちゃんが


「ただいま」


と元気に入ってきた。


そのいつもと何も変わらない笑顔に、胸が締め付けられる。


わたしの大好きな笑顔。


やっぱり、この人のこの顔を見ると、どうしても切り出すことができなくなってしまう。


タイムリミットはもう、すぐそこまで迫っているのに。


早く切り出して、きちんと伝えなきゃいけないのに。


分かっているのに、それができなくなる。


やっぱり、大好きだから。


でも、これ以上は隠しておくことなんて出来ない。


……きちんと、伝えないと。


リビングへ向かう健ちゃんの背中を見つめながら、ポケットの上から切符をそっと押さえた。











夕食を終えて、健ちゃんがお風呂に入ったのを確認して、わたしはクローゼットの片付けの仕上げに取り掛かった。


最後のそれを手に取り、ため息をついた。


小物が入っている、ちょっとおしゃれな小箱。


これをしまって、あとはダンボールを東京へ送るだけだ。


ダンボールに小箱を入れる直後に、わたしはその手を止めた。


そっと、小箱を開く。


わたしにとって、この小さな箱は、宝箱だ。


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