オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
あたしはひとまず現実に目を向ける事にした。


鬼の体から生じた淡い光を放つ球たちは、ふわりふわりと舞いながら、空へと上ってゆく。


あたしがそのうちの一つに手を伸ばすと、あの失礼男の声が飛んできた。


「バカか?“これ”は、人間が抱いた負の感情やドロドロした情念の塊。触れたら取り込まれる。こんな程度も見分けられないおまえの目は、腐った魚の目か?」


そう言われてあたしは慌てて手を引っ込めたけど、どうも気に入らない。


あの失礼男は何も教えてくれない。


もしこの光の球がヤツの言うとおりに、人間の負の感情……闇の部分ならば、それの元となる感情を抱いた人がいる。


もしもそれが自分ならば、とてもじゃないが平気でいられない。


人間は誰だって明るい心でばかり生きてる訳じゃない。


人には話せないけどあたしの中でだって、ドロドロした嫌な感情はある。

だから、あたしは訊いてみた。


「それならこれって、負の感情が浄化かなんかされて救われたってこと?あなた、『楽にしてやる』って言ってたし」
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