オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
でも、と絹枝さんは不安げに言葉を続けた。
「杏子さん……私この頃変なのです。
昼でも急に眠たくなって、寝入るのは宜しいのですけど。
自分が自分自身でないような心地がしてならないのです。
そんなときはいつも、夢で不思議な光景を見ているようで。
ここに来る最中でも、杏子さんと一緒に芦毛馬に乗ってきたような……
そんな気がしてならないのですよ。
おかしいですわね。
私は田島さんに背負って頂いた筈ですのに」
芦毛馬に!?
絹枝さんは馬を一度も目にしてない筈なのに、なんで芦毛だって知っているの?
それに、夢でって……。
そこで、あたしはハッと気付いた。
ヴィジョンで視た忠司さんが詠んだ和歌を聴いたのは……。
まさか。
でも、もしそうならば納得がゆく点も幾つかある。
信じたくなかった。
あんな事になるまで……したなんて。
絹枝さんを忠司さんに逢わせるには、あたしが視たヴィジョンを彼女にも見せるしか考え着かないけど。
それも、どんな方法があるのやら。