オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
「“もっと自分を信じ、生命を信じなさい。邪な存在は自然の中であり得ないのだから”」


あたしは、思わず赤石の顔をまっすぐに見た。


彼は穏やかな微笑みをたたえて、あたしの手を下ろす。


「覚えてるはずだね?
私が悩んだ君に言った事なのだから。
君は、凪の婚約で心を痛め、初めて対峙した黒き王への対処する方法が解らずに悩んでた」



忘れる……はずがないよ。


黒髪の王子さまから貰えた、数少ない言葉のひとつだったから。


チカや静江おばあちゃんたちとは別に、あたしを内から支え続けててくれたひとだから。


あたしは信じられない思いだった。


黒髪の王子さまが、赤石?


会った事もないのに、あり得ないよ。


でも、でも。


「“初めまして、お嬢さん。何か悩み事あるのかな?なら僕に言えばいいよ、誰にも言わないから”」


赤石が少しおどけた口調でこの台詞を口にした瞬間、あたしの中にあった疑念ははっきりと確信にすり替わった。


「君と初めて逢った時に言ったよね?君が小1で私が小5の夏だった」


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