オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】

本当に信じられなかった想いだけど、それなら全てに説明が着いた。


赤石に度々と感じた既視感。


そして、あの時の変わらないな、と心に響いた声。


漠然と感じていた、黒髪の王子さまはナギじゃないという想い。


だけど、わからない。


もしも赤石と逢ってたなら、少しは覚えてる筈なのに、あたしにはまったく記憶がないから。


「信じられないのも無理はないよね。私が君を見つけたのが、あんな状態の時だったから」


……あんな状態?


赤石はあたしが小学1年生の夏に逢ったと言った。


その時にあった出来事と言えば。




ゆっくりと記憶を手繰り寄せたあたしは、思わず声を上げそうになってとっさに口を手で塞いだ。


体が震えて気分が悪くなってくる――。


ドクンドクンと動悸が酷くなる。


赤石は黙ってあたしの隣に腰掛け、肩を抱き寄せる。


あたしは不本意だけど、彼の胸に凭れるしかなかった。


「そう……あの事件で犯人の男を殴り倒して君を助けたのは私だよ。直ぐに警察にも通報した」


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