オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
「君は衝撃のあまり軽い記憶障害を起こし、私がお見舞いに行っても認識出来なかった。
だから、私を見て辛い記憶を思い出させない為にも、自分から逢うまいと決めたんだ。
だけど、君は男性嫌悪症を起こしてしまってた。
私はますます逢うのを躊躇って悩んだ末に、夢の中だけでもいいから逢おうと考えたんだ」
ああ……そうだった。
あたしは男に悪戯された後、丸2日分の記憶が欠落したんだ。
その時のあたしはお見舞いに来てくれたチカやケンにも反応せず、虚ろな目でいたって。
2日目の晩に初めて黒髪の王子さまに逢えて、あたしの心はやっと働きを取り戻した。
赤石は肩に回した腕を背中に下ろし、あたしを優しく抱きしめた。
逆らう気は、起きなかった。
13年間憧れてやっと逢えた黒髪の王子さまだから、その温もりと存在が幻でないか確かめたかったから。
「君だけには明かすよ。
今は皇家に嫁いで現当主の正妻に収まっている安子。
皇命の母であり、凪の叔母であるその女が、私の本当の母親」