黒くなった、天使
天使は
羽の三分のニ抜かれてしまい、
今まで以上に
みすぼらしくなってしまいました
魔術師たちは
作られた黒い羽の黒い糸を持ち、
妖精が眠る大きな木へ行き、
首に巻きます。

そうやって
妖精も
王様の物になってしまいました
王様は
犬の散歩のように
妖精を連れて周り、
都合が良いように妖精を使います

用が無い時は
天使の目の前にある
石で作った牢屋に閉じ込め、
黒い糸を天使の小指に結び、
妖精が逃げないように
見張らせました。

大好きな場所を
好きなように飛べない妖精は、
石の牢屋で泣いて悲しみます
天使が食べ物を与えても
食べません。
話しかけても応えてくれません。
目の前に妖精がいるのに
天使は全然嬉しくない。
たった十数秒の妖精の姿が
大好きだったからです。

日に日に弱っていく
妖精を見た魔術師は、
栄養がありそうな食べ物を
ぐちゃぐちゃに混ぜて、
一口で飲み込める固まりを作り
無理やり飲ませます。
妖精は一段と無口なり、
顔の表情も曇っていきました

天使はいろいろと考え
思い付きます
砂浜にある石。
小指の先ほどの石を耳に添えると海の音がする”儚石”
山の奥、
渓流に洗われた水晶に似た石。
覗くと
青い空が見える特別な”青水晶”
天使は二つの石を
妖精にプレゼントしようと
考えつきました
だけど、
太い鎖は切れない、
切れるけど、切れない
二種類の石は
夜だけしか
海の音はしないし
空の色も見えない。
それに、
他の場所に移動させた石は
一度夜がくるとその力を失う。



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