それでも、すき。
…今になって思う。
あの時、ちゃんと香椎くんを信じてあげられてたら、今とは違う二人がいたのかな。
何も知らないまま、ずっと香椎くんの隣で笑っていられたんだろうか。
…今更そんな事考えたって仕方ないのに。
過ぎた事を悔やんでも、意味なんてないって、わかりきってるのに。
『うん。信じて。』
例え一瞬でも
ほんの少しでも
あたしが疑ったりしなければ、そう思ってしまうんだ。
「柚果、」
コトン、と置かれたコップに、あたしの肩が竦み上がる。
涙に濡れた顔で見上げれば、菜未ちゃんが優しく笑っていた。
「今お兄ちゃんから連絡あったよ。」
「…香椎くん、は…?」
「軽い肺炎起こしたみたいだけど、ちょっと入院すればすぐ良くなるって。」
その答えを聞いて
体中の力が抜けた。
「…よかった…。」
気が緩んだ途端、涙が溢れて来る。
菜未ちゃんが煎れてくれたテーブルの上のココアが、甘い香りをあたしに届けた。