それでも、すき。


ゆるりゆるりと
流れてゆく時間。

静かに降り続く雨音を聞いてると、まるで時間が止まったみたい。



「――柚果。」

ふいに呼ばれ、顔を上げた視線の先に映ったのは、真剣な眼差しであたしを見下ろす菜未ちゃん。


カタン、とイスを引く音が、静けさに響き渡る。

彼女が何を言おうとしてるのか、あたしにはわかっていた。



「大和と、付き合ってるんだよね?」


それは、目の前に座る菜未ちゃんが初めて口にした言葉で。

わかっていながら今まで核心に触れてこなかったのは、彼女の優しさなんだと思う。



だけど、あたしと香椎くんは今、付き合ってると言えるんだろうか。

隠されていた事実を目の前にして、あたしは向き合う事から逃げ出した。

それが、“恋人”だと本当言える?




自信がなくて、曖昧に頷いたあたしに、菜未ちゃんは続けて言う。


「じゃあ、ちゃんと話さなきゃ。」

「……でも、」


――これ以上、傷つきたくない。



そんな情けない独りよがりが胸をすり抜けた。




< 121 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop