それでも、すき。


あれから一週間。

何故か、香椎くんは毎日音楽室に来るようになった。



『たまにはセックス抜きで話そうよ。』

香椎くんが言った通り、キスをする訳でもなく、セックスする訳でもなく、本当にただ話すだけ。

最初から不思議な人だとは思ってたけど、香椎くんは変わってる。



カラダだけの関係だったあたしたちに、会話が生まれるとは思ってなかったし

ましてや、共通点もない。


香椎くんの考えてる事が、さっぱり理解出来ないあたしには
この一週間はとにかく奇妙な毎日だった。




「委員長ってさ、」

もぐもぐとオニギリを頬張りながら、香椎くんが問い掛けて来る。

あたしも負けじとデザートのリンゴを口に含んだ。



「何で、真面目ぶってんの?」

「…え?」


思わず、リンゴが飛び出しそうになった。

じゅわっと広がる甘味に、苦みがプラスされたような感覚。



「だって委員長、すっげぇ美人じゃん。」

もったいないくらいに、彼はそう付け足して、しゃきしゃきと軽快な音を鳴らしてリンゴを食べた。

さき程の卵焼きと同じく、あたしのお弁当箱からリンゴが消える。

香椎くんは昼飯泥棒だ。




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